気道のトラブルは『秒』を争う緊急事態です。
救急医として多く出会う気道トラブルは
・異物(食物、義歯など)
・顔面、頭頸部外傷に伴う出血
・痰づまり
・急性喉頭蓋炎 などです。
ある日、嗄声、喘鳴を伴う患者さんが搬送されました。
異物を飲み込んだエピソードはなく、もちろん外傷もなし。
私は急性喉頭蓋炎や咽後膿瘍などによる気道狭窄状態を考えました。
頸部CTを撮影したところ、上記疾患はなく、その代わり甲状腺が著明に腫大していて、それによる気道圧迫が原因かと思われました。
しかし緊急気管切開術目的に耳鼻科入院後、ある特徴的な病歴から
『再発性多発軟骨炎』と診断されました。
再発性多発軟骨炎は詳しい病態・発症機序はまだ解明されていない希少疾患です。
Ⅱ型コラーゲンに対する自己抗体が、耳介、鼻、気管、関節、心臓弁などの軟骨に反復する炎症を起こす組織破壊性の疾患です。
耳介の症状が最も高頻度だそうです。
多くは両側性で、1週間程度で軽快しますが反復します。
反復していると次第に耳介軟骨が軟化、下垂します。
また鼻の軟骨も炎症を繰り返していると、鞍鼻になります。
気管軟骨が侵されると、嗄声や喘鳴が出現します。重篤な場合は気管ステントの適応になります。
時には心臓の弁の軟骨に炎症が及ぶと、弁膜症が起きてしまいます。
強膜炎、ぶどう膜炎、視神経炎など眼の病変も出現します。
また再発性多発軟骨炎の1/3に血管炎などの自己免疫性疾患、骨髄異形成症候群などの血液疾患、悪性腫瘍が合併すると言われています。
治療としては副腎皮質ステロイド、メトトレキサート、免疫抑制薬(シクロフォスファミドやシクロスポリン)が投与されます。
30年ほど前までは診断からの平均生存期間が11年だったのが、
ステロイドや免疫抑制療法の発展により、現在では死亡例が1割程度までに改善しています。
再発性多発軟骨炎のまとめは以上です。
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