尿路結石の大部分はシュウ酸カルシウム結石と言われています。
脱水状態になるとシュウ酸カルシウムが結晶化しやすくなるため、
再発予防には1日2000ml以上の水分摂取が推奨されています。
あるランダム化比較試験では、1日2000ml以上の水分摂取し、1日尿量2500ml以上に保つことで、再発率を61%減少させることができるとしています。
この水分摂取について、患者さんに説明すると必ず聞かれるのが、
『どんな飲み物でもいいですか?』という質問です。
お茶(特に玉露や抹茶)やコーヒー、紅茶には結石の素となる、シュウ酸が豊富に含まれているため、再発予防の水分摂取として推奨できるものではなく、基本的にはお水を飲むようにお願いしています。
水は含有されるカルシウムとマグネシウムの量で硬度が算出されます。
日本の水の多くが、カルシウムとマグネシウムの含有が少ない軟水です。
ヨーロッパの水はこれらのミネラルが多い硬水のことが多いです。
そこでシュウ酸カルシウムの素となるカルシウムが多く含まれている硬水は、尿路結石の再発予防として飲む水としてふさわしくないのかと疑問が出ました。
尿路結石症診療ガイドライン2013年版を読んでみると、
CQ:カルシウム結石の再発予防には一定量のカルシウム摂取が必要か?
Anser:最近の前向き研究の結果から、カルシウム結石の再発予防には、カルシウム制限をするよりむしろ一定量のカルシウム摂取が勧められる。
との記載がありました。
以前は、カルシウム摂取によって尿中カルシウム濃度上昇が起き、結石形成に促進的に働くと考えられてきました。しかし一転して最近では、大規模な前向き研究によりむしろカルシウム摂取が少ない群の方が、結石になりやすいことがわかり、適正量のカルシウム摂取が再発予防の観点から推奨されています。
それはカルシウムを摂取することで腸管内のシュウ酸と結合し、腸管から排泄されることで体内への吸収が抑制されるからとのことです。ただカルシウムの摂りすぎは、余剰のカルシウムが吸収され、逆効果になってしまいます。
カルシウム摂取量は200mg〜1200mg /日の間であれば用量依存的にシュウ酸吸収を抑制するとされます。ちなみに日本人のカルシウム摂取量は500mg超/日ほどですが、厚生労働省の推奨量は約650mg〜900mg/日(性別や年齢により推奨量は異なる)となっていて、カルシウム摂取不足が指摘されています。
また硬水に多く含まれるマグネシウムについてもガイドラインに記載がありました。
CQ:シュウ酸カルシウム結石の再発予防として保険収載されているマグネシウム製剤は本当に有効か?
Anser:エビデンスは十分ではないが、日常診療で行って良い。
マグネシウムに関してはランダム化試験などのエビデンスレベルの高い研究が行われていないため、現在のガイドラインでの推奨度は低いですが、理論上は効果がありそうです。
マグネシウムはカルシウムと同じく腸管内でシュウ酸と結合することで排泄され、尿中シュウ酸濃度を下げる効果があります。また尿中では比較的可溶性の高いシュウ酸マグネシウムとなることでシュウ酸カルシウムと競合し形成抑制します。さらに結石の抑制因子である尿中クエン酸濃度を高める作用もあるとされます。
以上の結果からカルシウムとマグネシウムを豊富に含む硬水は尿路結石症の再発予防のための飲料として適切である可能性があると考えました。
ちなみに硬度が高くて有名なコントレックスのWebサイトには、
コントレックス1L/日で、
カルシウムは推奨量の62%(成人男性)、72%(成人女性)、
マグネシウムは推奨量の19~23%(成人男性)、26~29%(成人女性)が摂取できる。
と記載がありました。
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