S.gallolyticus菌血症を見たら大腸癌を探せ

今回はStreptococcus.gallolyticusの特徴をお伝えします。


以前、Streptococcus.gallolyticusStreptococcus.bovisと呼ばれていましたが、

1996年に下記のように名称が変更されました。

S.bovis biotype Ⅰ   ➡︎S.gallolyticus subsp. gallolyticus(以下、S.gallolyticus

S.bovis biotype Ⅱ.1  ➡︎S.gallolyticus subsp. macedonicus

S.bovis biotype Ⅱ.2  ➡︎S.gallolyticus subsp. pasteurianus 


S.gallolyticusは反芻動物の腸管常在菌であり、食物を通してヒトの消化管に入ります。

健常者の2.5〜15%腸管内に存在しています。


通常は、回腸(炭水化物が多く、生育環境が良い)に存在し、結腸(炭水化物が少なく、生育環境が悪い)では他の腸内細菌との競合に負けてしまうようです。

しかし、大腸癌の周囲ではグルコース代謝産物などの影響で生育環境が整い、S.gallolyticusが繁殖します。

また同時に大腸癌がある組織は免疫が正常に働かないため、菌が血流内に侵入しやすく、菌血症に至りやすいと考えられています。



腸管から血流に乗った菌は門脈を経て心臓に到達し、感染性心内膜炎を発症すると考えられています。

S.gallolyticusによる感染性心内膜炎の特徴として、

・複数の弁に疣贅ができやすい

・長径 10 mmを超える疣贅となることが多い

・ 塞栓症のリスクが高い 

ことが知られています。

これはS.gallolyticusサイトカインの放出を促進させ、血管透過性を亢進することで血流に移行する菌量が多いことや同菌の組織への接着性の高さが指摘されています


上記の機序からS.gallolyticusによる菌血症では、

大腸癌や大腸腺腫のオッズ比 7.26 

感染性心内膜炎のオッズ比 16.61 

と言われています。


そのため、S.gallolyticus菌血症を見たら、積極的に大腸癌や感染性心内膜炎を検索した方が良いとされます。


なお壊死性軟部組織感染症の原因菌のClostridium septicum菌血症も大腸癌との関連性が言われています。


今回の参考図書

レジデントのための感染症診療マニュアル 第4版

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