時代遅れの検査、新しい検査②

前回の記事に続き、

医学書院から発行されている『総合診療』2021年9月号の内容を要約します。

前回は時代遅れの検査についてまとめましたので、

今回の記事は新しい検査についてまとめます。


大血管炎の診断における血管エコーとFDG-PET

大血管炎は大動脈や四肢、頭頸部に向かう太い分枝に炎症が生じる疾患で、

巨細胞性動脈炎と高安動脈炎があります。

発熱や体重減少、頸部痛など非特異的な症状のため、早期の診断ができないことが多い一方で、失明などの合併症が起きうるため、早期の介入が望ましいとされます。


これまで巨細胞性動脈炎は側頭動脈生検が第一選択とされてきましたが、

侵襲的であり、また感度が77%とそこまで高くありません。


そこで非侵襲的な検査であるエコー検査が注目されています。

巨細胞性動脈炎では浅側頭動脈壁の浮腫により、動脈周囲に『dark halo』がみられます。

また総頸動脈、腋窩動脈、鎖骨下動脈にも異常所見が出るので確認します。


高安動脈炎では総頸動脈に内膜-中膜の全周性肥厚がみられるため、

エコーでは『マカロニサイン』と呼ばれる所見が出ます。


エコー検査は大動脈や鎖骨下動脈を広範囲に評価するのは苦手です。

そんなときはFDG-PETを撮影します。

FDG-PETのSUV maxのカットオフ値を2.1にすると、高安動脈炎の感度・特異度は90%を超えるため、非侵襲的な優れた検査と言えます。


髄液検査における髄液乳酸値

細菌性髄膜炎では髄液細胞数・蛋白の増加、髄液糖の減少がみられることが典型的ですが、13%で細胞数≦100mm3、44%で蛋白≦200mg/dL、50%で糖≧40mg/dLになるとの報告もあります。

非典型例が多い中、髄液乳酸値は、細菌性髄膜炎ではウイルス性髄膜炎と比較して、高値になることが知られていて、両者の鑑別に有用です。

むしろ今まで検査されてきた髄液細胞数、蛋白、糖と比較して、

髄液乳酸値は最も診断精度が高いとも言われています。

髄液乳酸値のカットオフ値を3.5mmol/Lとした場合、感度96%、特異度85%です。

あくまで総合的に診断することが重要で、髄液乳酸値のみで診断することはしないほうが良いです。


そのほか、

・原因不明の消化管出血における小腸カプセル内視鏡

・PMR、関節リウマチにおける関節エコー

・ネフローゼ症候群の病型診断における抗ホスホリパーゼA2受容体抗体

の有用性が記載されていました。


まとめは以上です。

今回の記事は『総合診療 2021年9月』を参考に作成しました。

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