医学書院から発行されている『総合診療』という雑誌を読みました。
2021年9月号『「検査」のニューノーマル』というお題で、
今まで有用と信じ込まれていた検査や
これからは一般的になっていくと思われる有用な検査について記載されています。
今回の記事では非有用な検査をまとめます。
・急性腎障害におけるFENa
FENaは急性腎障害のうち、腎前性腎障害と腎性腎障害を鑑別するために測定されてきた値。
糸球体で濾過されたNaの中で、再吸収されずに排泄されたNaの割合です。
腎前性では体液量維持のためNa再吸収が増加し、FENaが低下します。
腎性では尿細管障害のためNa再吸収ができずに、FENaが増加します。
この特徴を生かし鑑別に使っていましたが、利尿薬の影響を強く受けたり、またそもそも腎前性と腎性が合併していたりすることが多いことから、有用ではないと考えられています。
・急性間質性腎炎における尿中好酸球
急性間質性腎炎はβラクタム系抗菌薬、キノロン系抗菌薬、NSAIDs、PPI投与により発症する急性腎障害であり、急性腎障害の原因の6-30%を占めると言われています。
1970-1980年代の研究で、急性間質性腎炎の診断に尿中好酸球が有用であると報告されましたが、感度・特異度共に低いため、現在では測定意義がないと言われています。
・急性冠症候群におけるCK-MB
心筋逸脱酵素の一つであるCK-MB。
トロポニンと比較して、心筋虚血を証明するのには不十分とされます。
日本循環器学会の急性冠症候群ガイドラインでも、『心筋トロポニンが測定できる条件下では、ACSの診断にCK-MBやミオグロビン測定は推奨されない』と記載されています。
・低栄養におけるプレアルブミン
血清蛋白を電気泳動するとアルブミンの前に出現するため、プレアルブミンと呼ばれるタンパクがあります。甲状腺ホルモンの輸送タンパクとしての役割があります。
アルブミンの半減期が20日程度であるのに対して、プレアルブミンの半減期は1.9-2.5日と短く、急性期の栄養状態をより鋭敏に反映すると考えられていました。
しかし、プレアルブミンはステロイド、NSAIDs、腎障害、脱水症で増加し、
肝障害、甲状腺機能異常、ネフローゼ症候群、急性期の反応で減少すると言われています。
上記のように様々な因子に影響を受けるので、栄養の指標として有用ではありません。
そのほか、
・無症状、非特異的症状における腫瘍マーカー
・検査前確率が低い時の抗核抗体
・深部静脈血栓症におけるがん検索のためのルーチン造影CT
・肝硬変外来フォロー中のルーチンの血中アンモニア濃度
・急性膵炎診断時のアミラーゼ
などが非有用な検査として挙げられていました。
今回の記事は
『総合診療 「検査」のニューノーマル』を参考に作成しました。
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