幽体離脱はオカルト現象なのか

幽体離脱(体外離脱体験)は、自分の体を外から眺める体験のこと。
今まではオカルトの世界の話でしたが、近年では病態解明が進んでいます。

2002年に脳外科医が術前検査として電極を用いて、脳のある領域を刺激したところ、体外離脱体験を思わせる症状が出現しました。


それは『角回』と呼ばれる脳の領域を様々な電気強度で刺激することで、
『ベッドに沈み込む感じ』
『高所から落ちる感じ』
『ベッドに横たわる自分を高所から見ている感じ』
が誘発でき、体外離脱体験の再現ができたとの報告でした。



角回は体性感覚(痛覚や触覚)と体外空間認知(前庭中枢と視覚野)を統合する領域であり、そこを刺激することで幻覚が生じると考えられています。


てんかんが角回に及んだ時、体外離脱体験をすることがあります。
角回は前庭中枢に近いため、めまいを生じるてんかん患者に体外離脱体験が多いと言われています。体外離脱体験はてんかんのほか、重大な事故にあった患者でも高頻度に見られます。


また睡眠麻痺(いわゆる”金縛り”)に体外離脱体験が合併することも知られています。
睡眠麻痺は強い恐怖を感じるのが典型的ですが、体外離脱体験を伴う場合は、楽しさや幸福感などのプラスの感情を伴うことが多いとされています。


また頭内爆発音症候群という聞き慣れない疾患ですが、
入眠もしくは出眠時に『頭の中で大きな爆発音』がするという不思議な症候群があります。


この疾患が睡眠麻痺と体外離脱体験に併発する患者いるというのです。
体外離脱体験が前庭・運動性幻覚で、
頭内爆発音症候群は幻聴と幻触と考えられます。


つまりてんかんや外傷、その他の何らかの脳への刺激で、体外離脱体験や頭内爆発音症候群が誘発されるということです。

このような体験談が噂話として脚色が加えられ、オカルトになっていったのかもしれません。


今回の記事は前回と同様『怪談に学ぶ脳神経内科』を参考に作成しました。

これらの症状はめったにないと思っていましたが、
同僚に睡眠麻痺、体外離脱体験、頭内爆発音症候群を経験したことのある人がいました。


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