ザシキワラシの正体とは

 『怪談に学ぶ脳神経内科』という本を読みました。

日本に伝承される、ろくろ首、ザシキワラシ、金縛り、幽体離脱などの怪談を

脳神経内科の立場から真面目に解明するという内容です。

脳神経内科の領域は難解な疾患が多いので、

非専門医にとってはオカルト的な角度から疾患を学べるありがたいコンセプトの本です。


今回の記事ではザシキワラシと脳神経内科疾患についての内容を要約します。

明治から大正にかけて活躍した民俗学者の佐々木喜善さんによってまとめられた

『奥州のザシキワラシの話』によると

ザシキワラシは座敷や蔵などの薄暗い環境で出現する子供が典型例。

ただ子供以外の場合や気配のみの場合もあるそうです。

また笑い声や祭り囃子などの音を伴うこともあります。

このザシキワラシは日常の生物とは明確に区別できるものだったそうです。


一方でレビー小体病の幻覚について。

まずレビー小体病とは、

α-シヌクレインという物質が神経細胞内に凝集する疾患群であり(その凝集体をレビー小体と呼ぶ)、パーキンソン病とレビー小体型認知症が含まれます

その疾患群には幻覚があらわれることが知られていて、幻覚は、幻視、幻聴、幻臭、幻触など多岐に渡ります。

この中の幻視は開眼、覚醒時に薄暗い環境(視覚からの情報量が低下した時)で出現し、数秒続きます。また現在見ているものは幻覚であるという感覚があるという特徴があります。


レビー小体病では後頭葉の視覚野が変性することで、脳血流シンチで後頭葉の血流低下が確認できることが知られています。幻視が見られた症例では、それに加えて視覚連合野の代謝が比較的亢進していることもわかってきました。


それにより視覚連合野にストックされている映像が、意味や状況とは関係なく、意識の高次野に上がってくることで幻視が出現するのではないかと考えられています。この現象には扁桃体は関与しないため、感情を伴うことなく、単に映像が意識の中に流れてきます。

救急医の日々 注釈:もともと、視覚野の機能障害があるところに、薄暗いという環境が視覚野への入力を低下させることで、さらに視覚野が機能不全となります。それにより相対的に視覚連合野の活動性が増して、幻覚が生じると思われます。


これは視覚障害者に生じる幻視、シャルル・ボネ症候群と同じ現象です。

これは加齢黄斑変性や緑内障などの疾患で、著しく視力低下を来した患者では、やはり視覚野の入力が少なくなるため、視覚連合野の活動が亢進し、動物や幾何学模様などの幻視が見えることがあり、発見したスイス人学者の名前にちなんで、シャルル・ボネ症候群と呼ばれます。


これらの幻視は触ろうとしたり、話しかけたりすることで、現実にはコミュニケーションが取れないことを脳が感じ、幻視は消えます

上記のようにザシキワラシの特徴はレビー小体病の幻視によく似ています。


今回のまとめは以上です。

怪談に学ぶ脳神経内科』を参考に記事を作成しました。


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