救急医は知らない ステロイドの使い方①

 2022年5月に発売された『ステロイドの虎』を読みました。

この本ではステロイド投与におけるコツが多く記載されていました。

教科書ではあまり書かれない類の内容。

ステロイドを多用する内科の先生方の中では『当たり前な感覚』だけど、

使い慣れない医師にとっては『未知の世界』。それが書かれていました。


気になったところだけを、Q and A方式にして要約します。


Q. ステロイドを『いきなり中止して良い』、『長期投与の副作用を気にしなくて良い』のはいつまでか。

A. 3週間。3週間までは副腎抑制や免疫抑制がかからないため、いつでも止められ、易感染性の予防策をしなくても良いそうです。4週間を過ぎたらそれらを考慮しなくてはいけません。


Q. ステロイドの量をざっくりと分けてみよ。

A. パルス量  1000mgのソル・メドロール

  高用量   40-60mgのプレドニン(≒1mg/kg)

  中等量         20-30mgのプレドニン(≒0.5mg/kg)

  少量                5-7.5mgのプレドニン(≒0.1mg/kg)

ステロイドを使い慣れない医師にとっては量が多いか少ないかを感じることも難しいですが、ざっくりというとこのような感じだそうです。


Q. パルスで使えるステロイドは何か。

A. ソル・メドロールもしくはデカドロン。

ステロイドはプレドニン換算で1mg/kgを超えて投与すると、細胞内の核レセプター(グルココルチコイド受容体)は飽和します。それ以上の量を投与すると『non-genomic effect』が見られます。これは核レセプターを介さない機序によって、抗炎症作用を発揮する現象であり、投与後数分で効果が現れます(通常量では投与数時間後から効果出現)

ステロイドの種類によって『non-genomic effect』の強さが異なり、ソル・メドロールとデカドロンでは、効果が強いことが知られています。

ステロイドパルスと言ったら、ソルメドと言われる由縁です。


Q. 経口ステロイドを注射に置き換える時の投与量はどうしたら良いか。

A. 元々のステロイド量が少ない時は同じ用量でよく、中等〜高用量では経口量の1.1〜2倍にした方が良い。

これは経口ステロイドは活性型が製剤化されていて、なおかつ吸収が良好のためほぼ100%の利用率であるのに対して、注射ステロイドは溶解液によく溶けるようにリン酸やコハク酸でエステル化されているため、体内で加水分解されて初めて活性型となって効果が出るためだとされています。


Q. ステロイドを分割投与するとき、朝・昼と朝・夕どっちが良いか。

A. 夕に内服すると不眠症が出るから、朝・昼で処方することもあるかもしれません。ただ24時間の中でステロイド血中濃度が減弱してしまう時間帯ができてしまうので、朝・夕が良いそうです。減量に伴い睡眠障害解決できますし、実際に不眠症になってしまったら睡眠薬で対応できるため、ステロイドの血中濃度を保つことを優先させます


今回の記事は『ステロイドの虎』を参考に作成しました。

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