除草剤として販売されているパラコート。
パラコートは毒性が強く、1965年に日本で販売開始してから、中毒者が後を絶たない状況となったそうです。
その毒性を弱めるために、1986年にジクワットとの混合製剤が開発されました。
ただ現在でも、農薬中毒死亡者数の40%が、パラコートによるものだそうです。
パラコートは主に小腸で吸収され、肺、肝臓、腎臓、筋肉に分布します。
肺に分布したパラコートは脂質を過酸化させることで、細胞壊死が起こり、肺線維症を発症します。
その毒性のカスケードは酸素があることで進行するため、この中毒の初期治療では高濃度酸素は禁忌とされています。酸素投与を行う場合は、PaO2 50-60mmHgを上限として行うようにします。
パラコートを摂取してから以下のStageを辿ります。
Stage 1(摂取〜1日目)
嘔気・嘔吐、腹痛など消化器症状が出現します。口腔や消化管粘膜はびらんや潰瘍を形成します。大量に摂取した場合(20%製剤60ml以上)は、多臓器不全が進行し、このStageで死亡します。
Stage 2(2〜3日目)
腎不全および肝不全が進行します。
Stage 3(3〜10日目)
肺線維症が進行します。
パラコート中毒の予後は血中濃度と相関することが知られています。
Hartのノモグラムを用いて、予後を推定することができます。
20%製剤の場合は、成人10-20ml、小児4-5mlが致死量とされます。
治療は胃洗浄、腸洗浄(活性炭やケイキサレート、下剤の投与)です。
胃洗浄は排液の青緑色がなくなるまで行います。
腸洗浄は2時間ごとに繰り返し行います。
(ケイキサレートは通常は腎不全患者の高カリウム血症に対する内服薬ですが、その吸着力を利用してパラコート中毒に用いられることがあります。)
血液浄化療法として血液吸着を行う推奨もありますが、パラコートの分布容積は大きいので、効果は疑問視されています。
パラコートの毒性を弱めるために混合されるようになったジクワットも無毒ではありません。
パラコートとは違い、肺線維症は引き起こしませんが、毛細血管の壊死から脳幹部の出血を来しやすいとされます。
今回の記事は
『臨床中毒学』と日本中毒学会のWebページを参考に作成しました。
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