ギンナンを食べる習慣があるのは日本、中国、朝鮮半島など東アジアの国だそうです。
日本では米が凶作だった場合の備蓄食料として、イチョウ苗が植えられ始めたとのこと。
硬い殻の中にはあの美味しいギンナンが入っていますが、
ご存知の通り、外側の実の臭いは強烈。
いかにも「食べるな!注意!」と警告しているようにも感じます。
それは何もイチョウによるハッタリではなく、本当に毒性があります。
ギンナン中毒を引き起こす原因物質はMPNと呼ばれるものです。
MPNはビタミンB6群と競合的な作用を示し、
中枢神経内のグルタミン酸 → GABAへの代謝を間接的に阻害することで、
グルタミン酸濃度が上昇し、痙攣を発生させると考えられています。
痙攣のほかは消化器症状や興奮、傾眠、めまいなどの症状の報告もあります。
『年齢の数以上のギンナンは食べるな』という言い伝えがあります。
まさにその通り、幼児では10個程度、成人では50個程度で中毒域に達すると言われています。
ギンナン中毒で痙攣を生じた場合は、通常の対応と同じくまずジアゼパムを投与します。
そしてビタミンB6群との競合的作用が原因ですので、ピリドキシン(ビタミンB6製剤)の投与が有効です。投与量は2-10mg/kg程度とされます。
日本では戦後の食糧難の時代には、ギンナン中毒が多発していたようですが、最近では減少しています。
ただ、日本中毒センターにはギンナン中毒について毎年20件以上の相談があるそうです。
また中毒患者の8割は乳児、幼児、小児とされています。
意識障害、痙攣で搬送された人が、実はギンナン中毒だったなんてこともないとは言えないので、鑑別の一つとして覚えておいた方が良さそうです。
特に秋の収穫時期に出会った小児の痙攣には注意が必要と思われます。
今回の記事は
『救急医学 2021年11月』を参考に作成しました。
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