非痙攣性てんかんをMRIで見る

 意識障害の鑑別は、『AIUEOTIPS』に示される通り、多岐に渡ります。

そんな中、意識障害の原因として近年、注目を集めているのが、

非痙攣性てんかん

医療現場ではよく『NCSE』と略して呼ばれています。

非痙攣性てんかんは、

痙攣は見られないものの、意識障害をはじめとして片麻痺、失語など多彩な神経症状を示します。

異常な電気的な興奮が、運動野に及ばない場合や、及んだとしても微弱なため痙攣には至らない場合、『非痙攣性』となります。


診断の基本は脳波検査です。

しかし、夜間休日などすぐに脳波検査が実施できないことも多いと思います。


そのような時に、診断の助けになるのが、

頭部MRIのArterial Spin Labeling、ASLという撮影方法です。

ASLは組織の毛細血管レベルの微小な血流動態を見ていて、血管内の水分子のスピンを検出しています。そのため、ガドリニウム造影剤や放射線被曝がないため、非侵襲的な灌流評価方法と言えます。


てんかん発作時に、このASLで発作焦点の血流増加が確認できれば、

夜間休日や脳波検査が混み合っていて検査ができない状態でも非痙攣性てんかんを診断可能です。

『外来診療のUncommon Disease vol.3 p46』より引用

上の画像では右前頭葉、頭頂葉皮質の血流増加を示しています。

これにより非痙攣性てんかんの診断が速やかになり、抗痙攣薬の早期投与が可能となります。


ASLは非痙攣性てんかんだけではなく、脳梗塞のペナンプラ領域を知ることもできます。『https://www.jstage.jst.go.jp/article/mii/32/4/32_xxxvii/_pdf/-char/ja』のFig 3を参照してください。

Fig3は右中大脳動脈閉塞症の頭部MRI画像です。拡散強調画像では基底核のみの信号変化なのに対して、ASLではさらに大きな範囲で信号変化が見られます。

このASLでの信号変化領域から拡散強調画像での信号変化領域を除いた領域が、ペナンプラと考えることができます。


まとめは以上です。

今回の記事は、

外来診療のUncommon Disease vol.3』を参考に作成しました。

珍しい疾患が目白押しです。


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