侵襲性肝膿瘍症候群とは

 1980年代から韓国や台湾などの東アジアからの報告が見られる、

侵襲性肝膿瘍症候群』。ご存知でしょうか。

しばしば尿路感染症や肺炎の原因となる、

Klebsiella pneumoniaeが起因菌になるこの疾患。


免疫不全のない健常者にも発症することが知られています。

肝膿瘍を主病態として、中枢神経や眼内炎などに多発膿瘍をきたす重篤な感染症です

感染症を乗り切っても、神経障害や失明など後遺症を残すとされます。

侵襲性肝膿瘍症候群の原因となるK. pneumoniaeは、いつものヤツではありません。

ムコ多糖体を過剰産生する血清型であり、『過粘稠性K. pneumoniae』と呼ばれます。

過粘稠性を調べる検査はstring testと呼ばれるもので、培地に発育したコロニーを爪楊枝を使って引っ張り、5mm以上粘糸が引けた場合を、string test陽性とします。

肝膿瘍を原発巣として、様々な臓器に遠隔巣を作るのが典型例ですが、

肝膿瘍を作らない場合もあるので、注意が必要です(下記論文参照)。

敗血症性ショック、多発感染病巣を来した肝膿瘍を伴わない侵襲性過粘稠性クレブシエラ感染症の1例』(日本救急医学会雑誌 2020年2月6日)


最近の知見では糖尿病が発症のリスク因子及び視力低下の予後不良因子とされています。

K. pneumoniae感染症の経過中に、多発性膿瘍が見られる場合や難治症例の場合は、過粘稠性K. pneumoniaeを念頭に、string testを細菌検査室に依頼するのが良いと思われます。


今回の記事は、

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