大量輸血時のカルチコールの重要性

 重症外傷に対して、

大量輸血プロトコル』の有効性が示唆され、病院到着早期から輸血投与が行われることが多くなっています。

大量輸血したときに問題になる、低カルシウム血症。これについてまとめます。

RBC、FFP、PCには、それらが凝固しないようにクエン酸が添加されています。

RBC 2単位、FFP 2単位には共にクエン酸3gが含まれており、クエン酸3gは正常の肝機能であれば5分程度で代謝できると言われています。

大量輸血の場合は、

このクエン酸の代謝速度を上回るスピードで、輸血製剤が投与されることがあります。

また肝硬変による食道静脈瘤破裂時など、肝障害を伴っている場合にもクエン酸の代謝が追いつかないこともあります。

そのような場合は、クエン酸によりカルシウム値が低下し、

低カルシウム血症を発症することで

低血圧:心収縮力低下、末梢血管抵抗低下

凝固障害:凝固カスケードには補助因子としてカルシウムイオンが重要

が起きてしまいます。


外傷による低血圧や凝固障害を改善すべく、輸血を投与しているのに、

輸血をすることで逆に低血圧や凝固障害が起きうるということになります。


そのため、重症外傷時はHbやフィブリノーゲン値ばかりを気にするのではなく、

迅速に測定できる血液ガス分析でイオン化カルシウム値にも注目することが大切です。

カルシウム値が正常になるように(正常値:4.7-5.2mg/dL=1.1-1.3mmol/L)、グルコン酸カルシウムで補正します。


グルコン酸カルシウムの投与方法はslow ivが有名ですが、

『グルコン酸カルシウム(5ml) 10A +5%ブドウ糖液(100ml)を1時間で投与』のような、

点滴による持続的な補充のレシピもあります。


なお他のカルシウム製剤として塩化カルシウムがありますが、グルコン酸カルシウムの浸透圧比0.9に対して、塩化カルシウムの浸透圧比5と高いため、中心静脈から投与する必要があります。


外傷死の3徴として低体温、アシドーシス、凝固障害が知られていますが、

そこに低カルシウム血症を含めて、外傷死の3徴+αとして覚えておくと良いでしょう。


今回の記事は

『ICU/CCUの薬の考え方、使い方 ver.2』を参考に作成しました。

毎回言っていますが、理論的であり実践的な良書です。


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