ドブタミンとミルリノンの使い分け

 強心薬の代表格、ドブタミンとミルリノンについてまとめてみたいと思います。


ご存知の通り、

ドブタミンはβ1刺激薬であり、心拍数と心収縮をあげ、心拍出量を増加させます。

低心機能の症例に良い適応になります。

ただ心筋の酸素消費量を増加させるため虚血が出現・悪化したり、

血管拡張作用から血圧低下をきたすこともあります。


一方でミルリノン。

ホスホジエステラーゼ(PDE)を阻害することで、心筋細胞内のcAMPを増加させ、心収縮を増加させます。

ドブタミンとの違いとしては

・β刺激薬ではないため、β遮断薬内服中でも効果が期待できる

・心筋の酸素消費増加量がドブタミンより少ない

・ドブタミンより肺動脈拡張作用が強い(右心不全の時に良い適応となる)

・ドブタミンより頻脈にならない

などのメリットがあります。


その一方で

・効果が出るまでに時間がかかり、速効性を求める場合は初期負荷が必要

・血管拡張作用が強く、血圧低下することがある

・腎障害がある場合は用量を減らす必要がある

などのデメリットもあります。


そのため

右心不全、β遮断薬内服中、頻脈があればミルリノン

低血圧、徐脈、腎障害があればドブタミン

と使い分けることができます。


上記のような理論的データから考えられる使い分けを述べてきたわけですが、

実は心原性ショックに対する強心剤の使い分けについてのエビデンスはほとんどありません

2021年の8月に『心原性ショック患者において、ミルリノンとドブタミンは同等の効果』とする論文も発表されていて、強心剤の選択はまだ議論の余地があると言えます。

〜参考文献〜


August 5, 2021
N Engl J Med 2021; 385:516-525 
DOI: 10.1056/NEJMoa2026845


今回は上記論文のほか、

ICU/CCUの薬の考え方,使い方 ver.2

を参考に記事を作成しました。

薬剤の作用機序から具体的な処方例まで丁寧に記載があって、とても良い本です。

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