重症外傷におけるフィブリノゲン製剤

2020年の交通事故死亡者数は2839人で、これは1948年から警察庁が統計を取り始めてから最小の数だそうです。

その要因としては、シートベルトの着用率の増加や高速走行している車両減少などが考えられているそうです。

私としては、車の性能が良くなったことが、その要因として大きいような気がしています。

横転事故のような高エネルギー外傷でも、コックピットが保たれていて、打撲程度で済む患者さんも多いためです。


しかし、やはり重症外傷は起きています。

特にバイクはシートベルトもしませんし、守ってくれるコックピットもないため重症になることが多い実感があります。

そんな中、重症外傷、大量出血による外傷性急性凝固障害に対してdamage control resuscitation(DCR)が提唱されています。

DCRの概念の中で、最も有名なのか大量輸血プロトコル。

RBC:FFP:PC=1:1:1になるように輸血を早期からしていく方法です。

それに加え以前からフィブリノゲン製剤の重要性が指摘されています。

もちろんFFPの中にもフィブリノゲンは含まれていますが、含有濃度が低く十分なフィブリノゲンを投与するためには多量の輸血が必要になり時間も要してしまいます。


そこでフィブリノゲン製剤の出番です。

重症外傷に対してフィブリノゲンを

先制投与することで生存率が上がる報告や

総輸血量を減少させる報告があり、積極的に使用している施設もあります。


ただ現状、日本では先天性フィブリノゲン欠乏症にのみの保険適応のため保険外で投与することになります。

欧州のガイドラインでは大量出血に対して推奨がなされているため、日本でも保険適応になることが望まれます。


JETECが推奨している重症外傷に対する時間短縮戦略(CT省略や初療室手術)はせずに、大量輸血プロトコルに加え、フィブリノゲン製剤の早期投与をすることでCT撮影を実現し、綿密な止血戦略をとるようにしている施設もあるそうです。


今回は『ERで闘うためのクスリの使い方』を参考に記事を作成しました。実践的で買うべき一冊です。



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