産科領域のendovascular strategy

 産科領域での大量出血は緊張感があります。


以前、近医産科から紹介になった産後出血の症例。

出血性ショックでHb 3台の極度の失血状態で当院に搬送され、到着後に一時心肺停止になってしまいましたが、翌日には意思疎通可能になった症例を経験しました。その患者さんは後遺症なく、経過良好で退院されました。

毎回、産後出血に出会う度に母の強さを実感します。


産科領域の出血は救急医、産科医、IVR医、小児科医、集中治療医など複数科が関係するため、密な連携が不可欠です。

その実現のためには、やはり戦略の共有が大切です。その上で救急医がリーダーシップをとって全体を指揮しなければいけません。


今回、参考にしたのは「REBOA ハンドブック」。

以前にも紹介した本です。


この本に書かれていたことで印象に残ったのは、

産科領域でendovascular strategyを用いることで

・子宮全摘術より速やかにできること

・妊孕性を保てること

・子宮摘出に対する心理的な抵抗を減らすこと

などのメリットがあり、産科出血 × REBOAやUAEは相性が良いということです。


その他、気になった所を少しだけ紹介します。


REBOAのZoneについて

産科出血の制御にはZone 3でのREBOAが原則ですが、Zone 3では卵巣動脈の出血を遮断することができないため、心停止に近いような状態であれば、Zone 1でのREBOAになり得ることもあるようです。


予防的なREBOAについて

前置胎盤などのハイリスク帝王切開で両側総腸骨動脈もしくは内腸骨動脈を予防的にバルーンで遮断することで、術中の出血を制御してドライな術野を確保するができます。これも産科領域のendovascular strategyの相性の良いところの一つだと思います。


動脈アクセス確保と産科診察

産科診察の基本は砕石位ですが、出血性ショック状態では並行して大腿動脈にシースを入れる必要があります。その救急医と産科医の折衷案が、片足開脚位です。左脚を立てて、右脚は開脚位にすることで産科診察とシース留置が可能となります(左右逆も、もちろん可能です)。事前の打ち合わせが大切になります。


循環や凝固の状態からどのくらい切迫感があり、どのような戦略を立てるか、その場での判断も大切ですが、普段から各科とよく相談しておくことが緊急事態への対応をスムーズにすると思いました。


REBOAハンドブック


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