病歴聴取が難しい食中毒は

 今回は『ぶった斬り ダメ処方せん』という本を読んでみました。

この本は「あるある処方」を、オニマツというキャラクター(おそらく著者の國松先生の心の内)がぶった斬りしていくスタイルで書かれています。


その中で細菌性腸炎のページで気になったところを少しだけ紹介します。

下の図を見て何か感じることはありますか?



縦軸に潜伏期間が、横軸に発生形式が置かれています。

黄色ブドウ球菌は毒素型だから短いとか

サルモネラや腸炎ビブリオは感染型なのに短い

という知識は一般的に知られていると思います。


この本に書かれていたことは、

こういった潜伏期間が短い食中毒は患者さん自身が食事摂取歴を明確に覚えているため、食中毒と診断しやすく、

潜伏期間が数日以上の病原菌の場合は、食事摂取歴が曖昧になるため、病歴聴取が極めて難しくなるということでした。


カンピロバクターは頻度の高い細菌性腸炎ですが、その潜伏期間の長さから菌の同定に至る症例はわずかであろうと本書に書かれていました。


ではどの様にカンピロバクター感染を疑うか。

それは症状の出現の順番だそうです。


発熱、頭痛、倦怠感、筋肉痛といった腸管感染を想起させない症状が数日続いた後に、

腹痛と嘔気が生じ、下痢は最後に出てくるようです。

特にこの症状の中で頭痛が強いことが知られています。


また細菌性腸炎=血便、しぶり腹をイメージしがちですが、カンピロバクター腸炎では血便に至ることは少ないようです。


食中毒の診断難しいです。

高齢者や乳幼児では抗菌薬の適応になりうるので、

「現在は感冒と考えていますが、後に腹部症状が出現したら別の疾患を考える必要があるので再診してください」のような病状説明をしたほうがいいと思いました。


ぶった斬り ダメ処方せん



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