救急外来には造影CT撮影時に、
腎機能の検査結果を待っている時間的余裕がない場合があります。
また腎機能が悪くても、造影CTを撮影したいこともあります。
今回は造影剤腎症のあれこれをまとめてみたいと思います。
① 造影剤腎症は果たして本当に存在するのか。
造影CTを撮影しなければいけない患者さんは、全身状態が悪いことが多いです。
そのため造影剤投与後に腎機能が悪くなったときに、
本当に造影剤の影響なのか、それとも病勢の進行によるものなのかを明らかにするのは容易ではありません。
そのため、今までは造影剤腎症をCIN(contrast induced nephropathy)と呼んでいましたが、現在はPC-AKI(post contrast-AKI)と呼ばれるようになりました。
そんな中、Aycockらが造影剤腎症のリスクを評価するために行ったメタアナリシスによると、救急外来やICUでの造影CT群と非造影CT群の間にはAKI発症リスクの差がなかったそうです。
別の研究では、eGFR30未満の場合は、PC-AKIのオッズ比が2.96に上昇するとの報告もありますが、近年の多数の研究でeGFR30未満でもPC-AKI発症リスクは上昇しないと言われています。
つまり現時点では純粋な造影剤腎症の存在は証明はできていないと言えます。
ACR(American College of Radiology)は造影剤腎症は存在こそするものの稀であると言っています。
② 造影剤腎症の予防方法はあるか。
現在の日本のガイドラインやESURのガイドラインではeGFR30未満の場合は輸液や炭酸水素ナトリウムの輸液が推奨されています。
しかしAMACING試験では輸液群と非輸液群でAKI発症率に有意差がないことが明らかになりました。ただ症例数不足や経動脈投与が多いなどlimitationも多い試験だったため、絶対に輸液に予防効果がないとは言えないようですが、その他の研究でも同様に非輸液群での非劣勢が証明されています。
また造影剤投与後の腎代替療法の有効性もなく、むしろ血液透析についてはPC-AKIのリスクを増やすと言われています。
つまり有効な予防方法がない可能性があるということです。造影剤腎症の存在がないと言われているので予防方法がないもの当たり前とも思います。
今まで毎回気にしていた造影剤腎症とは一体なんだったのでしょうか。
造影CTが必要な人には躊躇せず、撮影していいということが言えますね。
★救急外来、ここだけの話★
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