先日、経験した症例を共有したいと思います。
80歳代の高齢男性。
下腹部痛のため救急搬送され、腹部エコーで尿貯留が見られたことから尿閉と診断しました。
独居であり、尿カテの自己管理ができないとのことだったので、尿カテ留置はせず導尿のみ行いました。その日はα遮断薬を開始し、外来でフォローアップすることにして帰宅としました。
数日後の再診時、下腹部痛はありませんでしたが、腹部エコーで尿貯留が著明で、腎後性腎障害も出現していました。
α遮断薬だけでは不十分と考え、ご家族のサポートを家で得られるようにして、尿カテ留置を行いました。
皆さんは尿閉のとき、どのような場合に尿カテ留置していますか?
今回参考にしたのは「救急外来, ここだけの話」。
結論から言うと尿閉に対してはほとんどの症例で尿カテ留置が適応になるようです。
膀胱内の尿量推定値 ≒ 前後径 × 長径 × 短径(cm) ÷ 2
で残尿量を求め、これが400ml以上の場合は、尿カテ留置が推奨されるようです。
抗コリン作用のある薬剤を使用後に尿閉が起きることは有名です。
そのほかには
髄膜炎尿閉症候群(MRS):無菌性髄膜炎に尿閉を合併。
急性散在性脳脊髄炎(ADEM):こちらも中枢神経感染に伴う尿閉。
Elsberg症候群:腰仙髄領域の帯状疱疹に伴う尿閉。
椎間板ヘルニア、ギランバレー症候群、SLEやウイルス感染による横断性脊髄炎
なども尿閉の原因になります。
つまり尿閉を見たときは一辺倒に前立腺肥大+抗コリン作用だけでなく
中枢神経疾患やウイルス感染症など背景疾患を考慮すべきですね。
次回から尿閉症例の残尿測定をしたいと思います。
★救急外来, ここだけの話★
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