怖くて眠れなくなる感染症 PART 2

前回の記事で、感染症は戦争の何倍も死者を出しているという話をしました。


私は某病院の救命救急センターで勤務していますが、確かに搬送されてくる患者さん(特に高齢者)の多くは、感染症であることが多い印象があります。医療が進歩した現代日本では感染症自体でお亡くなりになることが少ないと思いますが、感染症に続発した合併症などで臓器不全をきたし、最終的に命を落とすことは多いと思います。



『怖くて眠れなくなる感染症』の後半を要約していきます。





◆ 結核
7月5日現在、新型コロナウイルス感染症による全世界の死亡者数は52.8万人です。
では結核による1年間あたりの死亡者数をご存知ですか?


それはなんと150万人(2013年)です。
日本に限ると1955人(2016年)です。


救急医:みなさん結核を普段から恐れていますか?この数字を見ると新型コロナには恐れおののいているのに、なぜ結核を恐れないのか不思議になります。
ちなみに7月5日現在の日本での新型コロナウイルス感染症による死亡者数は977人です。


では2018年の交通事故死亡者数(日本)を知っていますか?
3532人です。


では2019年の自殺者数(日本)はどうでしょうか?
約2万人です。


新型コロナを正しく恐れることは良いと思いますが、それより何倍も死亡数の多い原因も多くあるということを知っておくのは大切だと思います。



◆ 風疹
ジカウイルスと同様に妊婦が風疹に感染すると胎児に障害を起こすことがあります。先天性風疹症候群と呼ばれ、難聴、白内障、心臓の奇形が知られています。風疹は風疹ウイルスによる感染症ですが、2012-2013年に日本で大きな流行が見られました。これを受けて2014年に東京都が調査を行ったところ4割の20歳代女性が十分な免疫を持っていないことがわかりました。


救急医:妊娠してからだと風疹ワクチンを接種することができないため、妊娠する予定のある方々は一度検査を受けたほうが良いと思われます。



◆ ノロウイルス感染症
急性胃腸炎を起こす疾患として有名です。また生牡蠣を摂取して感染する食中毒としても知られています。
この章で私が気になったところはウイルスは毎年流行型が変化するという話です。


人は一度感染すれば抗体が体内で生産されるようになるため、再感染を起こす確率が低くなります。しかし、そううまくはいかず、毎年少しウイルスが変異し流行を繰り返しています。


救急医:人間からしてみればとても迷惑な話ですが、ウイルスの視点から考えれば、毎年同じ型で流行を繰り返せば、やがて多くの人が免疫を持ってしまい流行できなくなるため、短期間に変異しやすい構造になっているという記載に興味を持ちました。


ウイルスの気持ちにはなったことがありませんでしたので、新鮮な感覚がありました。ウイルスは素晴らしいシステムを持っているということですね。


もう一つこの章で気になったところを紹介して最後とします。
イギリスのリーズ大学の研究で排便後にトイレの便座の蓋を閉めずに流した場合は、ノロウイルスなどの微生物が25cmまで舞い上がり、約90分間も浮遊していることが示されました。


救急医:新型コロナは糞便中にも排泄されることが明らかとなっていますから、毎回、便座の蓋を閉めて水を流したほうがいいですね。



気になったところの要約は以上です。
新型コロナは怖いですが、それ以上に以前から蔓延している感染症も同様もしくはそれ以上にに怖いということ、トイレの蓋は閉めて水を流したほうが良いことなどを学びました。



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