新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の特徴的な胸部CT所見

最近は自己啓発本ばかりブログに載せていていますが、私の本業は救急医です。アメリカの救急現場では、銃撃事件で搬送された患者さんのCTを撮影したら新型コロナだったとか、多臓器不全の状態で搬送された人が新型コロナだったとか、の話も聞きます。私の勤務する地域も少しずつ感染者が増えていますので、ひと時たりとも油断できないと緊張感を持って診療に当たっています。

先日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の特徴的な胸部CT所見についての論文をジャーナルクラブで読みましたので要約してみたいと思います。




読んだ論文は『A Systematic Review of Imaging Findings in 919 Patients』。
南カリフォルニア医科大学の放射線科の先生がCOVID-19の胸部CT所見について30編の論文の内容をまとめ報告したものです。American Journal of Roentgenology誌に2020年3月14日に掲載されました。

感染初期の特徴的な画像所見として
・両側性
・末梢、背側優位
・多葉性
・GGO(すりガラス陰影)
が挙げられていました。これらはCOVID-19患者さんの8割にみられる所見です。
50歳以上の患者さんにはGGOに浸潤影が合併した像も見られるようです。

感染中期に値する発症10日目は画像所見が最も派手になる時期です。
この時期には
・GGOの数とサイズの増加
・GGOの浸潤影への進展
・crazy paving pattern(すりガラス影内部に線状影が見られる所見)
が見られるようになります。

感染後期で稀に見られる所見としては
・胸水、心嚢液貯留
・リンパ節腫脹
・空洞性病変
・Halo sign
・気胸
があります。

一般的な経過として2週間程度経つと、GGOや浸潤影の段階的な減少と消失が見られ同時期に臨床症状もよくなってくるとのことでした。

重症化する患者さんではARDS(急性呼吸窮迫症候群)となり、ICU入室および死因の最も多い原因とされています。

またPCR検査と胸部CT所見についての関係性についても記載がありました。
通常はPCR検査で陽性になれば胸部CTでCOVID-19らしい所見があることがほとんどですが、中にはPCR検査陰性なのにCOVID-19らしい胸部CT所見があるとか、またその逆のPCR検査陽性なのにCOVID-19らしい胸部CT所見がないといったことがあるため、注意が必要だそうです。PCR検査で陰性なのに胸部CTがコロナっぽい時はPCR検査が偽陰性である可能性もあり、複数回のPCR検査が必要になるかもしれません。


論文の要約は以上です。末梢優位にGGOが出現して時間経過とともに数とサイズが増して浸潤影へと進展するのが特徴的なようですね。なぜCOVID-19はこのような画像所見になるか理由も気になります。知っている方がいればコメント欄で教えてください。



『A Systematic Review of Imaging Findings in 919 Patients』
https://www.ajronline.org/doi/abs/10.2214/AJR.20.23034

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