食べる投資 ハーバードが教える世界最高の食事術 第1-3章

私の3つ上の先輩が職場異動するにあたり先日、送迎会が行われました。その送迎会で先輩が、日本の医学研究は世界的に遅れていて、良質な医学論文は海外から発表されている現実があり、今後、日本の医学研究が世界をリードできるように頑張っていきたいと言っていました。なんと清らかで素晴らしい志。そしてその先輩を快く送り出す教授の心の広さにも感動しました。


今回読んだのは栄養学についての本です。もともとは杏林大学病院の救急医だった著者がハーバード大学の栄養学の教室に留学し、学んだ内容となっています。著者が救急医だった頃、脳卒中や心肺停止症例などが搬送され治療に成功したとしても、元の健康状態に戻って退院する人はごくわずかであり、疾患を発症させない予防医学に興味を持ったそうです。予防医学の基礎が体の健康を保つこと、つまり栄養学が全ての医学の基礎にあるという考えに行き着いたそうです。先輩の指摘通り、やはりこの本の中でも日本の栄養学は20年遅れているとの記述がありました。



幸せな人生とはどんなものでしょうか。いくらお金を持っていたとしても健康でなければ良い人生とは言えません。つまり幸せの前提として健康があるのです。正しい栄養学を学ぶ(投資する)ことで健康という資産を手に入れることがこの本の趣旨です。


第1章 最大のリターンを得る投資は『食事』である
現代社会の利便性に乗じてコンビニやスーパーで手軽に買え、袋を開けただけですぐに食べられるものばかりを食べていると、体にとって本当に必要な栄養素が不足して不必要なものは過剰になる『現代型栄養失調』状態に陥ってしまいます。この飽食の時代に栄養失調なんて面白い表現です。加工食品や糖分過剰、ミネラル・ビタミン不足などが代表的な現代型栄養失調です。


ビタミン・ミネラルの宝庫であったはずの野菜や果物は食べやすさを追い求めた品質改良や土壌の劣化などにより栄養価が落ちていることも現代型栄養失調に拍車をかけています。食事によって血圧、LDLコレステロール、血糖値など生活習慣病に関連する因子に影響があるのはいうまでもありませんが、うつ病などの心の不調も栄養失調から始まるようです。


◇良い会社は社員が元気
会社が良い会社になるためには社員が心身ともに健康であることが必要です。ただ今の日本で行われている年1回の健康診断では社員の健康は守ることができません。グーグル、アップル、アマゾンなどの企業が競って血糖値管理デバイス開発に投資をしています。


◇適切なタンパク質摂取
ハードなトレーニングをする人やマラソンやトライアスロンなど負荷の強いスポーツをする人はプロテインで大量のタンパク質をとる傾向にあります。しかしタンパク質の過剰摂取はホモシステインの血中濃度を上げてしまいます。ホモシステインは悪玉アミノ酸と呼ばれ動脈硬化による脳卒中、心筋梗塞、また認知症や癌のリスクもあげてしまいますので、タンパク質は適量の摂取にとどめることが大切です。またタンパク源としては四つ足動物の豚や牛からではなく(豚や牛肉は腸内細菌を変化させ発癌リスクを高める)、鶏肉、魚、卵からを基本とします。摂取量は鶏肉と魚でいえば毎食手のひら1枚分が適切です。


◇隠れ糖質に注意
知らぬ間に糖質を多く摂取してしまうため隠れ糖質を意識しましょう。
甘くないお菓子:醤油せんべい、ポテトチップス
甘くない野菜や果物:さつまいも、じゃがいも
清涼飲料水、栄養ドリンク:果汁100%フルールジュースや野菜ジュース



第3章 パフォーマンスを最大化する食事術
(第2章は第3章に内容が含まれるため割愛します。)
第1章では食事が健康に及ぼす影響について書かれていました。
第3章ではどのような食事をとれば良いかの具体例が提示されています。


①納豆を毎日1パック食べる
・感染症予防:腸内細菌叢を望ましい状態に整える。
・骨を丈夫に:ビタミンKの作用により動脈壁のカルシウム成分を骨へ移動させます。動脈硬化も改善し骨も丈夫になるなんて良い作用です。
・スペルミンという成分が体内の炎症を抑えることでアンチエイジング作用があると言われています。アンチエイジングという言葉が出るといきなり胡散臭くなりますが、ハーバード大学で学んだ先生の言葉なので信じたいと思います。ただハーバード大学なのに結局、納豆?なのかという気持ちにもなります。


②食物繊維でメンタルを強化する
およそ40種類以上の神経伝達物質が腸内で合成されていルことから腸は第2の脳とも呼ばれています。精神を安定させる働きを持つセロトニンはその80-95%が腸内細菌によって作られています。そのため、下痢や便秘が慢性化している人はメンタルにも問題があることが多いと言われています。食物繊維を取ることで腸内細菌叢を整え、メンタルを安定化させます。野菜や海藻類、キノコ類に多いとされます。食物繊維がメンタル安定させるなんて思っても見なかったです。


③タンパク質を考える
肉食が過ぎると炎症物質であるアラキドン酸が増加し体内の炎症が生じてしまいます。そのため魚を週に半分、それ以外では鶏肉、卵、豆を基本とします。


④1日4色の野菜で炎症を防ぐ
野菜は量ではなく色の種類を目安に摂取すると簡単です。
赤:トマト、スイカ、唐辛子
黄:玉ねき、パプリカ
橙:かぼちゃ、にんじん
緑:ほうれん草、小松菜、春菊
紫:なす、赤キャベツ、赤紫蘇
黒:さつまいも、ごぼう

これら野菜の色はファイトケミカルと呼ばれ、野菜が環境から身を守るための成分です。ファイトケミカルを1日に複数種類とると健康になれるようで1日4色を目指します。母がお弁当を作るときに同じようなことを言って彩りを考えていたことを思い出しました。


⑤ココナッツオイルを常備する
ココナッツオイルの主成分である中鎖脂肪酸は腸管から速やかに吸収され肝臓でケトン体へと変化し脳で効率の良いエネルギー源として利用されます。第3の糖尿病と呼ばれるアルツハイマー型認知症では脳の神経細胞が糖をエネルギー源として利用できなくなっていることが知られていて、ココナッツオイルを摂取することでケトン体増加から脳の神経細胞のエネルギー源となり認知症状を改善させる可能性があるとして注目さています。高温処理されたものは有害なトランス脂肪酸が混入するため、商品を選ぶ際はエクストラバージンと表記があるものを買います。


⑥鉄とビタミンBを摂取する
女性は月経により鉄不足になる可能性があります。冷え性やだるさの原因になります。動物性食品に含まれるヘム鉄が吸収しやすいので卵、肉、魚、レバーなどを摂取します。また糖質摂取が多い人、頭脳労働が多い人、便通が不安定な人はビタミンB不足が考えられます。ビタミンBは豚肉や鶏レバー、魚、貝、海苔などに含まれてます。鉄もビタミンBも食事摂取のみでは不足しがちなのでサプリメントを飲むことも選択肢としてあります。


⑦男性ホルモンを増強させる
意欲低下などのパワーダウンを感じたら男性ホルモンの分泌が低下している可能性があります。男性ホルモンは女性にとっても若々しさを維持するために重要なもので低下を放置すると意欲や記憶力低下、骨量や筋肉量低下、抑うつなどの症状がでます。この男性ホルモンを増強させるのがDHEAです。男性ホルモンや女性ホルモンの原料となるステロイドホルモンで副腎で作られています。DHEAは20歳代をピークに徐々に減少してしまい、70歳代では20歳代の20%程度まで低下することもあります。一方で長寿で健康な男性はDHEAの血中濃度が高く維持されている報告もありアンチエイジング物質として注目を集めています。日本では医療機関でしか処方できないものですが、自然薯などの粘り気のある芋類を摂取することで同じような作用を持つ物質を補うことができます。


⑧3つの栄養素をサプリでとる
・ビタミンD
骨を丈夫に、免疫力増強、動脈硬化・糖尿病予防、筋力の維持など多岐にわたる良い作用がある物質です。日光を浴びることで皮膚で作られるほか、鮭や青魚などを摂取することでも補充できます。生体で重要なのはビタミンD3だそうです。

・亜鉛
200種類以上の代謝酵素に関与している亜鉛はDNAやタンパク合成、性ホルモンの分泌、免疫力のコントロールなどに関わる極めて重要な栄養素です。体内の亜鉛は加齢と大量のアルコール摂取によって減少することがわかっています。牡蠣やレバー、チーズ、煮干し、ココアなどに含まれています。

・マグネシウム
亜鉛を超える300種以上の酵素反応の補助因子であり、細胞のエネルギー源であるATP産生の補酵素でもあります。また細胞内のカルシウム濃度も調整していて、マグネシウムが欠乏するとカルシウム濃度が上昇し朝方に足がつるようになります。青菜、海藻類、木の実などに含まれています。


第1-3章のまとめ
・タンパク質は魚、鶏肉、卵、豆を中心に。
・カラフルな野菜を食べて食物繊維とファイトケミカルを摂取する。
・ココナッツオイルで脳を活性化。
・ビタミンD3、亜鉛、マグネシウムはサプリメント内服も考慮。


第4章は次回の記事に書きたいと思います。



食べる投資 ハーバードが教える世界最高の食事術


コメント