蘇生後ST上昇がなければ待機的カテでも予後に変わりなし

成人の心肺停止の主な原因として虚血性心疾患が知られています。そのため蘇生に成功した患者に緊急の冠動脈造影(CAG)やカテーテル治療(PCI)をすることは多いと思います。ただ蘇生後にST上昇が見られない時に緊急CAGやPCIが必要かどうかは明らかになっていません。

2019年4月にThe NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINEに投稿されたCOACT試験はその疑問を解決してくれます。本試験はランダマイズド、オープンラベル、多施設共同研究でデザインされています。


対象患者は初期波形がショック波形で蘇生後、意識障害のある人。除外例はSTEMI、ショック、明らかに冠動脈疾患ではない人としました。552人がランダムに緊急カテ群とゆっくりカテ群に分けられ、緊急カテ群はランダム化後2時間以内で、ゆっくりカテ群はICU退室後、神経学的に回復してから行いました。両群ともPCIが必要であれば行いました。プライマリーエンドポイントは90日目の生存、セカンダリーエンドポイントは90日目の神経学的予後、カテコラミン投与、人工呼吸器期間、大出血、腎代替療法、体温管理療法開始までの時間などを設定しました。

経過中にゆっくりカテ群の患者に心原性ショック、致死性不整脈の再燃、虚血性心疾患の再燃が見られた場合は緊急カテを行ないました。

両群の平均年齢は65歳で8割が男性でした。緊急PCIが実施されたのは緊急カテ群で33%、ゆっくりカテ群で24%でした。

プライマリーエンドポイントの90日目生存は両群で有意差なく、セカンダリーエンドポイントは体温管理療法までの時間がゆっくりカテ群で短い以外に有意差はありませんでした。最初にカテに行かない分、早くICUに入室して体温管理を始められるということですね。

STEMIではない蘇生後患者に緊急カテをすると生存に有利だったという先行研究があります。本試験の結果はその研究とは異なるものになりました。その理由の一つとして先行研究では緊急カテをした方が予後が良い患者の選択バイアスが働いた可能性があると著者は指摘しています。二つ目の理由として患者集団の違いも挙げられます。本試験の患者の64%で冠動脈疾患があり、その割合は先行研究と同程度でしたが、本試験ではほとんどが安定型でした。

結論としてはショック波形からの蘇生後にSTEMIではなければ緊急カテしても待機的にカテしても予後は変わらなかったということでした。

VFサバイバーの人にカテーテルを待機的にするのは気が引けますよね。循環器内科のいない病院では蘇生後に焦らなくても良いということでしょうか。ただ本試験でも経過中に急変した時はやはり緊急カテに行っているので、早めに循環器内科のいる病院に転院させる方針に変わりなさそうです。


『COACT試験』
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1816897

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