頭部MRIにおけるSWI

頭部MRIでDWIやT1、T2強調画像、FLAIR、MRAなどはよく見ると思いますが、SWIという撮影方法もあるようです。

SWI(susceptibility weighted imaging)は日本語標記では磁化率強調画像。比較的最近に(2005年頃)提唱されたMRIの撮影方法です。教科書的に言うと従来の強調画像に位相画像(磁化率変化による位相差)を乗じて磁化率をより強調した画像だそうです。簡単に言うとT2*強調画像のコントラストを上げ、さらに空間分解能を向上させたもの。T2*強調画像でも検出できないような出血も鋭敏に検出できるようです。微小出血以外に低信号として検出できるのは急性動脈塞栓子、急性期脳梗塞領域の静脈です。

SWIを用いて外傷症例で見られるびまん性軸索損傷(DAI)と脂肪塞栓(FES)についてまとめてみようと思います。


DAIは外傷による剪断力により脳内の構造にずれが生じることで発症するもので、受傷直後から意識障害を認めます。CTで意識障害を説明する責任病変がないときにDAIを疑います。三大好発部位は①大脳の皮髄境界 ②脳梁 ③脳幹です。DAIに出血を合併するかしないかで所見が違います。

出血(−):DWIで点状高信号、数日後からFLAIRで高信号になります。
出血(+):T2*強調画像、SWIで点状低信号。DAIに微小出血は30−50%に合併します。

FESは受傷後12−48時間の潜伏期間の後、全身に塞栓症状を起こします。皮膚の点状出血、呼吸不全、意識障害などです。死亡率は10−20%で救命できれば後遺症が残ることは少ないとも言われています。受傷直後から広範に起きるFESは電撃型と呼ばれ急速に死の転帰をとります。画像変化としては動脈支配によらないshower embolismと白質の点状出血が起きるため、DWIで無数の点状高信号(starfield pattern)が見られ、T2*強調画像、SWIでは点状低信号が多発します。

両者は合併することもあり画像変化も似ているため明確な鑑別は難しいですが、鑑別ポイントを2点記載しておきます。
・DAIよりFESの方が広範に病変が出現するためDAIの好発部位以外(深部白質や小脳半球)に異常信号がある場合はFESの可能性が高くなります。
・DAIは出血を伴わないことも多いため、DWIで点状高信号が見られる一方でT2*強調画像、SWIで低信号がなければDAIの可能性が高くなります。


SWIは普段あまり使わない撮影方法なのでまとめてみました。MRIはいまだに発展途上で新しい撮影方法が次々に出てきているようです。テクノロジーの進歩とともに、それを利用する医療者も進化して行きたいですね。


参考にした本
『よくわかる脳MRI』
https://gakken-mesh.jp/book/detail/9784780908497.html

『脳のMRI』
https://www.medsi.co.jp/products/detail/3444

『脳MRI 2. 代謝・脱髄・変性・外傷・他』
https://gakken-mesh.jp/book/detail/9784879623775.html

コメント

  1. 普段見ない撮像法なので、勉強になりました。

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    1. SWIがルーチンになっている医療機関もあるようですよ。

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