非ショック波形(心静止、無脈性電気活動)から蘇生した患者に対する低体温療法についてフランスから論文が投稿されました。その名はHYPERION試験。The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINEに2019年10月に掲載されています。
<背景>
現在、2015年蘇生ガイドラインで心肺停止蘇生後患者に低体温療法が推奨されています。ただ2013年にNeilsenがTTM試験を発表し低体温療法群と正常体温群では生存率、神経学的予後に有意差は認められなかったとしたことから、非ショック波形蘇生後に低体温療法をする症例は減少しています。非ショック波形は患者数が多い一方で、神経予後良好となる割合はショック波形の65%と比較して2−15%と低くなっているため、非ショック波形に対する低体温療法の効果についての研究は急務でした。
<背景>
現在、2015年蘇生ガイドラインで心肺停止蘇生後患者に低体温療法が推奨されています。ただ2013年にNeilsenがTTM試験を発表し低体温療法群と正常体温群では生存率、神経学的予後に有意差は認められなかったとしたことから、非ショック波形蘇生後に低体温療法をする症例は減少しています。非ショック波形は患者数が多い一方で、神経予後良好となる割合はショック波形の65%と比較して2−15%と低くなっているため、非ショック波形に対する低体温療法の効果についての研究は急務でした。
<方法>
ICUに入室した非ショック波形から蘇生した昏睡患者を対象としました。年齢は18歳以上で昏睡はGCS8点以下と定義しています。GCSは救急医が鎮静を始める直前でスコアリングしました。院内・院外CPAともに含み、心停止の原因も心原性に限らずあらゆるものとしました。これらの症例を低体温療法群(33度を24時間)と正常体温群(37度)に分けてRCTを行いました。 Primary Outcomeは90日目の神経学的予後の良い生存としました。神経学的評価はCPCスケールを使用して、 予後良好の定義はCPC1または2としました。
<結果>
2014年から2018年に登録された2723人のうち除外基準症例が除かれ584人がランダム化され、それぞれ287人と297人が両群に振り分けられました。No-flow time(CPAになってからCPR開始までの時間)が10分以内と定義されているせいか、目撃ありが9割以上あり、バイスタンダーCPRが7割もあります。初期波形は心静止が7割でPEAが1割でした。CPAの原因は窒息が半数を占めていて、心原性は3割以下になっています。
Primary Outcomeの結果は、90日目のCPC1または2だったのは低体温群の10.2%に対し、正常体温群では5.7%と有意差を持って低体温療法群で神経予後良好でした。死亡率や有害事象の発生率は、両群で有意差はありませんでした。
<結論>
院内、院外によらず、また心停止の原因によらず、非ショック波形から蘇生した昏睡患者に対する低体温療法は神経学的予後を改善させることがわかりました。
高齢社会が進む中、心肺停止で搬送される患者は増加しています。
そのほとんどの波形が心静止、無脈性電気活動であり、これらの患者に全例低体温療法を行うことは現実的ではありません。今回の試験からは心静止、無脈性電気活動と言えども目撃あり、バイスタンダーCPRありで速やかな蘇生が得られた症例の中で社会的背景を考慮して低体温療法をするかどうか検討すべきと思いました。
『HYPERION試験』
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